作家を応援 大切な場所に　西郷工芸の郷にギャラリー＆カフェ（鳥取）（日本海新聞） - Yahoo!ニュース

特別制作した因州・中井窯のケーキ皿（手前）など、作家の器が楽しめるカフェ＝鳥取市河原町弓河内の西郷工芸の郷オクダン

　工芸作家を呼び込み、地域活性化を目指す鳥取市河原町西郷地区に昨年12月、同地区の作家の作品を展示するギャラリーとカフェ「西郷工芸の郷（さと）okudan（オクダン）」が完成した。西郷に来てもらうきっかけにしてほしいと、作家が特別に作ったカフェ用の食器や手洗い鉢などの限定品もあり、工芸の郷の魅力を発信する拠点施設として注目を集めている。　同地区には白磁の人間国宝、前田昭博さん（67）をはじめ、陶芸やガラス、木工など10工房が点在。年1度の展示即売会「西郷工芸祭り」は毎年多くの来場者でにぎわうものの、作品が常時見られる場がなく、地域活性化のチャンスを生かし切れずにいた。　施設は郷づくりを進める住民組織「西郷工芸の郷あまんじゃく」（北村恭一代表理事）が運営。鳥取県のふるさと納税型クラウドファンディング（CF）事業を活用して資金を募り、同町弓河内の空き家を整備した。名前のオクダンは、空き家の所有者の屋号が奥の谷にあることを意味する「奥谷（おくだん）」だったことに由来する。　カフェで使う器や施設内の備品には作家の特注品もあり、ひときわ目を引く。因州・中井窯は白、黒、緑の釉薬（ゆうやく）を縁と皿の中側全体に掛け分けたケーキ皿を作った。これまでも同タイプの掛け分けはあったが、縁の裏に滑り止めの彫り込みを施し、皿の周囲には小さな水玉模様の遊び心も。窯元の坂本章さん（56）は「見えない部分こそ使いやすさにこだわり、手仕事ならではの美しさを加えた。西郷だけの特別感を味わってほしい」と話す。　工房このかは、カフェのグラスに合わせて県産のナラやミズメを使ったコースターを制作。洗面所には花輪窯と三々窯の手洗い鉢をしつらえ、普段の仕事とは異なる作家の新たな一面を見ることができる。　180万円を目標に募ったCFには、予想をはるかに上回る469万3千円が寄せられた。大半が地元住民からの寄付だったといい、より充実した空間にするため当初の改修計画を大幅に見直し、4月末の正式オープンを目指す。ギャラリーは当面展示のみだが作品も販売し、カフェをワークショップなど学びの場として活用する計画もある。　北村代表理事（75）は「若い作家を応援し、地域の人や来てくれた人にとってかけがえのない大切な場所になれば」と展望する。営業は水、土、日曜の午前10時～午後4時。